「獣人魔島」(横溝正史)

今回の御子柴少年は、スーパー・ヒーロー

「獣人魔島」(横溝正史)
(「横溝正史少年小説
  コレクション④青髪鬼」)柏書房

「横溝正史少年小説コレクション④」

「獣人魔島」(横溝正史)
(「真珠塔・獣人魔島」)角川文庫

「真珠塔・獣人魔島」角川文庫 昭和版

刑務所を脱走した
死刑囚・梶原の消えた
鬼頭博士邸の前で、
怪しげなトランクが
運び出されるのを目撃した
御子柴少年は、
密かに尾行を開始する。
鬼頭博士たちを追って、
御子柴少年は東京から岡山、
そして瀬戸内海の無人島へと…。

「横溝正史少年小説コレクション」が
毎月刊行されるという
嬉しい事態のおかげで、
横溝ジュヴナイルを毎週日曜日に
取り上げている次第です。
今回は1955年に発表された「獣人魔島」。
ジュヴナイルの
王道を行くような作品です。

今日のオススメ!

【主要登場人物】
梶原一彦
…脱走した死刑囚。
 脳の移植手術を受ける。
獣人魔
…ゴリラの体に
 人間の脳を移植した怪物。
三芳隆吉
…梶原に死刑判決を出した判事。
三芳由紀子
…三芳判事の娘。13歳。
鬼頭博士
…医学博士。脳移植の研究者。
里見一郎…鬼頭博士の助手。
船長…悪人集団の一人。
お小姓…悪人集団の一人。
志賀恭三
…真珠王。老人。真珠の宝船を所有。
志賀三千男・百合子
…志賀老人の孫。15歳と12歳。
糟谷警部…警視庁警部。
三津木俊助…新日報社記者。
御子柴進…新日報社給仕。

本作品の読みどころ①
探偵小僧・御子柴少年大活躍

なぜジュヴナイルの
王道を行く作品なのか?
それは大人がまったく活躍せず、
御子柴少年の一人舞台だからです。
彼は単独で東京から汽車に乗り岡山へ、
さらには汽船に乗って白木島へ、
島の寺に宿を借り、
さらには筏を拝借して
敵のアジト・骸骨島へと
単独潜入捜査を敢行するのです。
子どもが読めば
さぞかし胸躍る大冒険です。

それだけでなく、
悪の一味に拉致され袋詰めにされて
川に投げ込まれた三津木俊助
(本作品では
まったくいいところなし)を、
里見とともに救出したり、
敵のアジトに再び潜入し、
油煙玉を駆使して敵を追い詰め、
悪者一味を壊滅させるという
大活躍です。
今回の御子柴少年は、
単なる探偵助手ではありません。
スーパー・ヒーローなのです。

本作品の読みどころ②
少年が少女を守り、少女も冒険

そのスーパー・ヒーローは、
当然女の子を守ります。
由紀子を陰日向から見守るだけでなく、
秘密のアイテムを授け、
危機を救出するのです。
さて、そのアイテムとは…、
ちなみに生き物です。

本作品の読みどころ③
「怪獣男爵」にも似た化物キャラ

ゴリラの体に悪人の脳を移植する。
この設定は「怪獣男爵」(1948年発表)と
同一です。
いっそ怪獣男爵シリーズ
(「怪獣男爵」「黄金の指紋」「大迷宮」)の
続編にしてしまえば
良さそうなものですが…、
結末はやや拍子抜けです
(御子柴少年を最後まで主役に
据えるためには仕方のない設定です)。

実は乱歩少年探偵団シリーズも、
1954年の「鉄塔王国の恐怖」あたりから、
明智小五郎ではなく
小林少年と少年探偵団が前面に出て
二十面相と対峙するようになります。
大人が主役ではなく、
子どもたちが活躍する流れを、
乱歩も横溝も
お互いに意識していたのでしょう。
当時の子どもたちの心を
わしづかみにしたジュヴナイルを、
しっかり味わいましょう。

(2021.10.24)

〔追記〕
角川文庫「真珠塔・獣人魔島」が
ついに復刊しました。
内容は同じであるにもかかわらず、
またしても購入してしまいました。
表紙はまったく同じです。
色艶がよくなりました。

令和4年復刊版表紙

(2022.12.13)

Pete LinforthによるPixabayからの画像
おどろおどろしい世界への入り口

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